オリジナル蔵書印のススメ
蔵書印とはどんなもの?
自分の所有している本に押印し「これは私の本です」と伝える、それが蔵書印の役割です。
身近なところでは、図書館の図書に押されている「〇〇図書館」の印。本の所有者や所蔵者を明らかにし、紛失や盗難を防ぐ働きをします。
図書館など公共の図書に押された蔵書印が一般的ですが、個人の蔵書であったり、文庫所蔵の書物にも蔵書印を押す方もいらっしゃいます。
本を愛する人にとっては、お気に入りの本を手に入れる喜び、コレクションが増える喜び、そして大切な本を所蔵する喜びが、自分の蔵書印を押印することでより一層深まります。
このように、本の所有者を明確にする役割とともに、自分のお気に入りの愛読書に「これが私のお気に入りの一冊ですよ」とう想いを示すものでもあるのです。
大切な本だからこそ自分だけの「しるし」を押したくなる。本好きさんのときめきの「しるし」なのですね。
落款印と蔵書印は違うの?
どちらも篆刻(てんこく:文字を彫刻すること)で作成されるものですが、伝える意味が異なります。
落款印が自分が作成した作品に、「作者は〇〇です。」としるすために押すものであることに対し、蔵書印は、「所有者は〇〇です。」と所有を明らかにする役割を果たします。
蔵書印のたのしみ
◆デザイン
蔵書印のデザインだけ見ても個性豊かで、その人、あるいはその文庫、図書館のこだわりが現れています。
公共の図書館などの蔵書印は「〇〇図書館」といった文字だけの落款印ですが、文字だけの印(しるし)だからこそ、サイズや書体、文字のバランスなど、それぞれに違いが表れていることがわかります。
個人の蔵書印は、本当に個性豊かです。
個人的に楽しむ蔵書印は、何よりもまず自分の大切な本に自分のしるしを付ける、ということですから、蔵書印のデザインも、それぞれ独自に趣向を凝らし、図柄入りのものや、文字だけの蔵書印もその文字の風合いなど、長く愛されるデザインが押印されます。
◆履歴・歴史
古書店に並ぶ古書の中には、古い古い蔵書印が押されていることがあります。どこのだれかが所有していたのかは分からないけれど、不思議な縁で今ここにある。そんな本の来し方を彷彿とさせてくれる。蔵書印が伝える本の履歴に興味を持つ方も少なくありません。
◆コレクション
蔵書印を押すことで、自分のコレクションに晴れて仲間入り。より愛着の湧く一冊となることでしょう。自分の蔵書印へのこだわりと同時に、他の人の蔵書印にはどんな趣味趣向が凝らされているのか?どんな本がお気に入りなのか?蔵書コレクションと蔵書印のデザインなど、楽しみ方もぐっと広がります。
蔵書印の東西
蔵書印は、洋の東西を問わず昔から受け継がれてきました。
東洋では蔵書印、西洋では蔵書票という違いはありますが、現在のように大量に同じ書物が出版されなかった時代においては書物は貴重でその一冊を紛失してしまえば二度と手に入らないもの。
そのため、貸出しの際に「この本は〇〇の蔵書ですから、大切に扱って下さいね。そして必ずご返却ください」というメッセージを伝えるのに大きな役割を果たしたのでしょうね。
蔵書印あれこれ
◆蔵書印にはどのような文字を刻みますか?
「所有者+蔵書」という形式がポピュラーです。「〇〇図書」「〇〇文庫」「〇〇愛書」といった蔵書印も多くあります。
朱文(白地に朱の文字)でも、白文(赤地に白の文字)でも、どちらでも構いません。
ちなみに、海外の蔵書票にはラテン語で「エクス・リブリス(Ex Libris)」と記され、空欄に所有者の名前をサインします。「Ex Libris」とは、「◯◯の蔵書から」という意味です。
◆蔵書印を押す色は?
基本的に朱で押印します。黒で印刷された書物に押すことで押印の存在がはっきりと目立つだけでなく、朱の色は他の色と異なり経年によって退色や変色するおそれがほとんどないからです。
◆蔵書印の形
もっとも一般的なものは正方形の蔵書印です。
特にきまりがあるわけではないので、丸い物、縦長横長の長方形など、趣向を凝らしてオリジナルの蔵書印のデザインを楽しむこともできます。
◆蔵書印の材料
柘植などの木材や、石などが一般的です。手軽に消しゴムで手作りするかたもいらっしゃいます。
小林大伸堂で自分だけの蔵書印を作ることができます。
大切な蔵書のしるしとなる蔵書印。だからこそ、所有される方の想いを込めて、一点一点作成いたします。
◆吉相体の書体
一般的な落款印は篆書体にて作成されます。大伸堂では、縁起のよい「吉相体」にて八方に広がりを持つ書体にて新たな気風の落款印をお仕立ていたします。
◆八方位の運気
八方位と呼ばれる8つの運気を文字に込めてお作りします。
◆自分らしさを表現して
ご依頼の際に、ご希望のイメージをお伺いし作成いたします。
名をしるす、ということ。
「これが私の愛読書です」と示す蔵書印。名前を記すものだからこそ、あなたの想いが伝わることを願っています。
◆余談
ジブリ映画「耳をすませば」でも・・・・
映画「耳をすませば」の冒頭、雫(しずく)が図書室で借りた本にしるされた蔵書印に気付くシーンがありますね。「天沢蔵書」という蔵書印に、「これってひょっとして 〝天沢聖司”と関係が…!? 」と気になってしまう。
そんなドキドキするワンシーンに一役買っている蔵書印 なのでした。